おやじは荒野をめざす【アラスカ編】

がむしゃらに突き進むおやじに、アラスカは何を与えてくれるのだろう、、、

(33) 荒野の続き

アラスカは確かに遠のいてしまったけれど、アラスカから続く荒野、いや、荒野という言葉が相応しいのかどうか分からないけれど、次に目指すべき目標はすでに三つあるんだ。 一つは「フランク安田の交易所を保存するためのクラウドファンディングを立ち上げる…

(32) 先生、お帰りなさい!

アラスカがどんどん遠ざかっていく。 インサイドパッセージと呼ばれる、アラスカ南岸の多島海を縫うように走る航路をフェリーで南下して2日目。後ろに過ぎ行く島影と時の流れが同調しているかのように感じられて、何とも心地よい。スプルースの森に覆われた…

(31) 出会い、繋がり、そして縁

人生で大事なのは金運ではなく「人運」だよ。 一つ一つはバラバラで、一見なんの繋がりもないみたいだけど、ある時、それらが一定の方向性を持って「繋がっている」と感じることがある。なんで繋がったのか自分でもよく分からない。でも、自分の意志以外の何…

(30) ユーコン・アラスカの人々

日本ではありえないスケールの自然を求めて訪れたユーコン・アラスカだったけれど、一番心に残ったのは、そこで会った人々だったのかもしれない。彼の地では、今、この時も、彼は、彼女は、渡し船を操り、工事現場で旗を振り、図書館の本をリペアーし、パソ…

(29) ユーコン・アラスカの自然ー空、雲、山、河、大地

アラスカはどこも空が広かった。同じ雲なのに同じ雲と思えない、それがアラスカだった。 ▲道とチョウノスケソウが直角に交わってるとこまで行けば、縦縞模様が見えるはずなんだけど、それがそうならないところが自然の不思議かも。 ▲ウナラスカ島はいつも霧…

(28) ワイルドライフ〔その3〕

アラスカには"生え方"が日本とは違っている花や木が多い。日本の自然では到底考えられない規模の単一種の大群落がよくある。生物地理学で「新北区」と呼ばれる北アメリカ大陸のアラスカだからこその植生で、「旧北区」の日本などではまずお目にかかれないス…

(27) ワイルドライフ〔その2〕

山、森、川、湖、空、、、アラスカはあらゆるところに野生の命がひしめいていて、自然を求める旅人をいっときも休ませてくれない。 ◾️白頭鷲 憧れの猛禽類だ。高い木の梢に止まっていると様になるが、交通標識や電柱だと"孤高"のイメージと合わない。意外と…

(26) ワイルドライフ〔その1〕

アラスカをめざした理由の一つは、野生動物との出会いだ。日本では考えられないような自然の豊かさとスケール、そして奥深さを感じないわけにいかない。 ◾️ムース だんだんムースが近づいてきた。草食動物とはいえ馬よりも遥かにでかく、近づけばなおのこと…

(25) 工夫の天才

仲のいいカナダ人、正確にはギリシャからの移民なんだけど、彼に「日本は素晴らしい国だな。日本人は優秀で俺は日本人が大好きだよ。韓国人や中国人とは違うよな」と言われた。「日本人の女の子は本当によく働いてくれたぜ。今いるのは韓国なんだけど全然ダ…

(24) ファーストネーション

今回の旅ではいろいろなところでファーストネーション、先住のイヌイットの人たちと出会った。北極海に近いイヌビクのスーパーでは、突然イヌイットのオバハンに「あんたは私の従兄弟とそっくりだよ。なんて名前なの?」と呼び止められ、「日本から来たキヨ…

(23) アリューシャン探訪

今から50年以上前、日本中の小学生は毎週火曜日(だったと思う)を楽しみにしていた。「少年サンデー」と「少年マガジン」という二大週刊漫画の発売日だったからだ。で、その「少年マガジン」(だったハズ)の巻頭特集に太平洋戦争が取り上げられ、あるページ…

(22) やばかったこと〔その2〕

◼︎スピードオーバーでポリに呼び止められる パトがすぐ後ろを走っている。邪魔になっちゃ悪いなと道脇に車を寄せたらパトも同じことをする。えっ、これって俺の車に用があるわけ?なんかいけないことしたかなあ、、、空き地に停車。パトも停まる。ドアを開け…

(21) やばかったこと〔その1〕

◼︎車の追い越し アップダウンはあるものの、どこまでも真っ直ぐに伸びるハイウェイを快適に飛ばしていたら2台のキャンピングカーが見えてきた。中央ラインは追い越しOKの破線。2台まとめて抜いちまうか。上り坂に差し掛かったところでアクセルを踏み込み反…

(20) ベーリンジア

何年か前に読んだ本の中に「ベーリンジアというところは一度行くと"病みつき"になる」みたいなことが書いてあって、妙にこれが頭にこびりついた。ベーリンジアとは、ウン万年前にユーラシア大陸と北米大陸を繋いでいた陸橋なんだけれど、そのベーリンジアが…

(19) 彼らの社会

今回の旅では本当にたくさんの人と出会い、お世話になり、「人類、皆兄弟」みたいに感じることが多かったけれど、たまに「これって何なの?」とか「理解できねーな」みたいなこともあったりして、、、 ◾️BD問題 太り過ぎのことである。こちらの人は全員、ど…

(18) 地の果て、北極海

ドーソンの町からオフロードをどれだけ走っただろう。広大無辺のツンドラにまっすぐ伸びるこの道の先には地の果てがあり、その先には北極海がある。でも、行けども行けどもツンドラばかり。何時間も同じ景色が続いていて、標高が低くなっている気配はない。…

(17) 空飛ぶインディアンガール

ベーリング海峡を見るのを目的に訪れたノームで、実はトンデモナイ女の子に会った。 冷たい雨の降る飛行場から乗合タクシーを飛ばして宿泊先へ。玄関ドアを開けて大きな声でハローと叫んだら、20歳前後のちょっと色黒の女の子が出て来た。 「今、オーナー…

(16) 旅を支えてくれた道具たち

旅に工夫はつきものだ。というより、工夫のない旅はつまらないし、様々な工夫をすること自体が、旅の楽しさの一部とさえ言えるだろう。今回は、自分なりの工夫によってさらに機能を高めた道具たち=頑張ってくれた忠実な子分たちを紹介する。 ◾️車関係 一日…

(15) オーロラ大先生

フェアバンクスがどんなところか、ガイドブック「地球の歩き方」を見たら、「アラスカ大学フェアバンクス校にはオーロラ研究の世界的権威である赤祖父俊一氏が今も研究を続けられていて、研究棟は氏の名前を冠してアカソフビルディングと名付けられている」…

(14) ドライキャビン

車中泊を三日連続してると相当きついことが分かった。車のセカンドシートを倒してフルフラットにし、荷物を一方に寄せてスペースを確保。薄い掛け布団とスポンジを敷布団みたいに下に敷き、寝袋はモンベルの高級品。よく眠れるし、汚ならしい安宿などよりよ…

(13) 納豆と本を愛する男、ランス

フェアバンクス郊外のチナリバーで大して面白くもない釣りを終え河畔のベンチで一人ぼーっとしていた時、ランスは現れた。車を停め、ズズズっと私に近寄り、いきなり「僕は来週、ビーバークリークにグレイリング釣りに行くんですよ。あそこは釣れた魚食べれ…

(12) 氷河を実感する

海岸が凸凹やギザギザになっているリアス海岸ついては、多くの日本人は聞いたことがあるはずだ。岩手県の太平洋側や福井県の若狭湾などが有名で、水の侵食が何千年、何万年も繰り返されて出来上がるらしい。ふーん、そんなものかな、、、とこれはなんとなく…

(11) ユーコン川の畔にて ー ポールの老母【後半】

次の日、村をぶらついていると、ユーコン河畔でボーッと遠くを見ているばあちゃんに会った。 「やあ、また会いましたね。昨日はご馳走様でした」 「ふんにゃ、ふんにゃ、、、」 「おばあちゃんはユーコン川が好きそうですね」 「そりゃあそうさぁ、、、ユー…

(11) ユーコン川の畔にて ー ポールの老母【前半】

ビーバー初日、村の中を写真を撮りながらあてどなく歩いていたら、先ほど学校で会ったイヌイットの男の人が「今、サーモンを料理しているから、晩ご飯まだのようなら食べに来ないか」と誘ってくれた。宿泊施設のない僻地ゆえ、山用のわずかばかりの食料で我…

(10) ユーコン川の畔にて ー フランク安田の偉業【後半】

ビーバーは人口100人程度、ツンドラの海に浮かぶ"陸の孤島"だ。写真を撮りながらのんびり歩いても半日とかからずに回れてしまう。家々の入り口にはヘラジカやカリブーの角が飾られていて、何に使うのか分からない、おそらくはウン十年前に活躍したに違い…

(10) ユーコン川の畔にて ー フランク安田の偉業【前半】

鎖国時代に海外で活躍した日本人といえば山田長政やジョン万次郎が有名だけれど、明治後半のアラスカで極寒の地の村人を救い、当地では今も「アラスカのモーゼ」と尊称される日本人がいたことはあまり知られていない。 安田恭輔、後のフランク安田は、明治維…

(9) パルナシウスを求めて【後半】

7月3日、晴れ時々曇り。気温が低めなのはいいとしても、風が強いのが気にかかる。それに一般の観光客?みたいな人たちがちょこちょこやって来る。でも、そんなのは関係ない。めざすものに出会えればいい、それだけである。前回より飛んでいるチョウの数が…

(9) パルナシウスを求めて【前半】

ホワイトホースの観光案内所でたまたま手にしたパンフレットを見て、私は思わず「お、よ、ょ、」とのけ反った。「ケノヒルには珍しいチョウが生息していて、ケノシティーには研究所もある。チョウの名はパルナシウス・エベレスマンニ、、、」。 あまりにも"…

(8) 消えた白いポール【後半】

次の日の夜、8時半過ぎ。昨日、白いポールが見えた時刻まであと少しだ。私は一つの「仮説」を立てた。ここは北極圏に近く、夜になっても太陽がなかなか沈まずに地平線に沿って移動する。真横に近いくらいの角度で日の光が辺りを照らし、すべてのものに長い…

(8) 消えた白いポール【前半】

日本でのことだが、山ではたまに「あれっ?」とか「変だぞ!」と思うことが起きる。人っ子一人いないはずの山中ででテント泊をした時、暗くなってから、「ぎゃー」という叫び声を聞いたことがある。そのあたりで猿を見かけたことはないし、どう考えても人の…