おやじは荒野をめざす【アラスカ編】

がむしゃらに突き進むおやじに、アラスカは何を与えてくれるのだろう、、、

(8) 消えた白いポール【後半】

 次の日の夜、8時半過ぎ。昨日、白いポールが見えた時刻まであと少しだ。私は一つの「仮説」を立てた。ここは北極圏に近く、夜になっても太陽がなかなか沈まずに地平線に沿って移動する。真横に近いくらいの角度で日の光が辺りを照らし、すべてのものに長い影ができる。私は考えた。ある時刻になると太陽の光が白いポールに当たり、その反射光が私のいる場所に届くのではないか。その時刻が午後9時半。9時前の時点で白いポールが見えていないのは、反射した光が私の位置とは少しだけ東側にズレているということではないか。9時を過ぎた。地平線近くの太陽が発する光が辺りを包み込み眩しい。そろそろ、白いポールが光り出していい頃ではないか。写真撮影はもちろんのこと、双眼鏡も用意してはっきり決着をつけてやる。 

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左 : 6月22日午後9時15分。この時刻では見えない。バックの空に溶け込んでいるのだろう。

中 : 同日9時35分。はっきりと白く光っているのが分かる。ポールの表面は反射率の高い「白」で、しかも「平面(つまりポールは細長い四角柱)」ではないだろうか。「曲面(ポールは細長い円柱)」なら光り始めと光終わりの区切りがもっとあやふやになるはずだ。

右 : 同日9時46分。およそ10分で光りの「いたずら」は終了した。

 

 「夜の9時なのになんでこんな明るいの?」ってのが、皆さんの共通の疑問だろう。ここは北極圏まで二百キロくらいの高緯度地方で、しかも6月下旬のほぼ夏至の時期。北極圏なら夜がなくなってしまう白夜になる季節だからなのだ。

 

 確かに、山では怪奇なことに出会うことがある。謎が謎のままになってしまうことも多い。でも、今回の「白いポール」は私の仮説がぴったり当たった。「やったぜ」という気持ちと「なーんだ、そんなことか」の気持ちが半々ずつ抱えて、私は久しぶりに文化的な生活のできるドーソンの町に戻った。