おやじは荒野をめざす【アラスカ編】

がむしゃらに突き進むおやじに、アラスカは何を与えてくれるのだろう、、、

(12) 氷河を実感する

  海岸が凸凹やギザギザになっているリアス海岸ついては、多くの日本人は聞いたことがあるはずだ。岩手県の太平洋側や福井県若狭湾などが有名で、水の侵食が何千年、何万年も繰り返されて出来上がるらしい。ふーん、そんなものかな、、、とこれはなんとなく納得できる。ところが、もう一つのギザギザ地形であるフィヨルドは、氷河が大地を削ってできると説明されているのだけれど、氷河そのものが想像しにくい。雪渓と氷河はどこが違うのか、雪渓が発達して氷河になるのか、そもそも氷河が大地を削ると言われても、全然ピンとこない。それなら、雪渓だって大地を削るんじゃないかとか。氷河にしろフィヨルドにしろ、言葉としては理解できても、現実としては全然納得いかない。じゃあどうするか。実物を見るしかない。

 カナダで学生に混じって勉強してたとき、カナディアンロッキーのツアーがあって、オプションで「氷河見学」と言うのがあったから取り敢えず参加してみた。遠くに氷河が見えるところでバスから戦車のような雪上車に乗り換え、氷河の上に降り立った。印象は「バカでかい雪渓」と言う感じ。普通の雪渓よりも半透明の氷っぽい部分が多いような気もしたが、あいにくの雨がそう見せているのかもしれない。これが大地を削りフィヨルドを形成するって、、、全然、実感が湧かない。

f:id:ilovewell0913:20190323125719j:plain
f:id:ilovewell0913:20190323125749j:plain

▲裸のおっさんは無視して後ろの氷河を見て欲しい。確かに雪渓とは規模が違う。表面は雪と氷の中間状態。凍ると青白くなるのは雪渓も同様である。

 

 次に氷河を見たのは、クマ探しでブリティッシュ・コロンビア州のスチュワートに行く途中だった。3千メートル弱の山の頂から 、もはや雪ではなく、氷の塊が、谷を圧して削り下っている。雪が氷になり、自重を増し、重力によって少しでも位置エネルギーの少ないポジションを求め、恐らく、大地と氷との接地面は地熱で温度が若干高めで、軟化したした土を削ぎ落とし、岩も亀裂に水分が入り込んで破砕され、氷河もろとも下へ下へ、何千年、何万年もかけて下へ下へ。小さい凹みは押し広げられて谷になる。名も知らぬ(多分、名前はついていると思うが)この氷河を見て、「ああ、確かに氷河は大地を削る。巨大な氷の塊が重力によって下に移動する際に、大地を削り取る」というのが実感できた。

f:id:ilovewell0913:20190918083728j:plain
f:id:ilovewell0913:20190918083342j:plain

 

 その後で、北米大陸最高峰のデナリを小型飛行機による氷河見学で訪れた。デナリは氷河の本場中の本場だろうし、上空からの俯瞰だから、氷河の全体が把握できるのじゃないかと、高額のフライト代を支払った。

f:id:ilovewell0913:20190918093303j:plain
f:id:ilovewell0913:20190918093150j:plain

▲急峻な稜線に降った雪は、積もることなく雪崩となって谷(カール)へ落ちる。カールに溜まった雪が固まり、氷となり、自重で低いところを探し求め谷を形成する。  

f:id:ilovewell0913:20190918093444j:plain
f:id:ilovewell0913:20190918093354j:plain

谷の雪、いやすでに氷化したものだろうが、は固まり、重さを増し、低いところを求め、谷を削る。氷河の上に刻まれた幾何学模様が、移動そのものを物語っている。氷河=氷の河はこうして大地を削り、最後は海に達する。その谷が海水で水没し、フィヨルドが形成される。

 

随分とお金も時間もかかったが、昔からの疑問が目の前でほどけた。あぁ、気持ちよかった。