おやじは荒野をめざす【アラスカ編】

がむしゃらに突き進むおやじに、アラスカは何を与えてくれるのだろう、、、

(14) ドライキャビン

 車中泊を三日連続してると相当きついことが分かった。車のセカンドシートを倒してフルフラットにし、荷物を一方に寄せてスペースを確保。薄い掛け布団とスポンジを敷布団みたいに下に敷き、寝袋はモンベルの高級品。よく眠れるし、汚ならしい安宿などよりよっぽどいい、、、と思ってたのに、繰り返すうち、疲れが取れない気がしてきた。なあに、慣れれば大丈夫と考えたが、逆に疲れが溜まってきた。原因はあれこれ考えるまでもなく、歳とったってことでしょう、悔しいが。また、風呂やシャワーは我慢できても、トイレはそうはいかない。雨が降ってたり、蚊の巣窟だったり、キャンブ場なら公衆トイレがあるけれど、全てボットンだし、手を洗うことができない。車中泊は睡眠以外のところで意外とストレスが溜まると痛感した。で、財布と相談しながら、安宿に泊まることが多くなった。一番上等なのは勿論ホテルで2万円以上、これはムリ。モーテルやインでも1万円前後する。それよりもやや安めででコテージやキャビンというのもある。ビーアンビーは個人の家の一室を短期間借りするようなもので、5千円はする、ドミトリーは相部屋で二段ベットの一つを使うみたいな形で2千円。安いけど、イビキのひどい私は気を遣っちゃうから、相部屋はやはりムリ。ちなみに、各地でよく見かけるRVパークは、普通車なら500円から1000円くらいで利用できる。「トイレ付き車中泊」みたいなもので、山中の車中泊よりだいぶマシ。他にも色々あり、マンションや一戸建ての一室を貸す、ワンフロアーを貸す、地下室やロフトを貸すなどなど。大体は期待以上のことが多く、安い金額ではないが、おしなべて良心的だ。ネットで調べて申し込むが、説明の用語の意味するところが正確には分からないことがある。その中で5千円前後で泊まれる「ドライキャビン」というのがあって、「ただのキャビンより風通しが良くて過ごしやすいのかなぁ、、、」と考えて申し込んだ。

 

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▲最初のドライキャビン。シンクで食器を洗う度に床が水浸しに。「変だなぁ」と思ったら、「水は洗面器で受けて外に捨てろ、場所はどこでもいいから」の"親切な"注意書きを後で見つけた。排水パイプくらい簡単につけられると思うのだが。トイレは野外に設置するのがドライキャビンでは基本のようだ。ここのは長年に渡って実によく使い込まれていて、臭いが歳月の長さを物語る。紙はゴミ箱に丸めて!?捨てなくてはいけない。ある種のコツが必要。

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▲同じドライキャビンでもピンからキリまであり、ここはピン。真ん中の写真、シンク横の青いのが水タンク。水の大切さを学ぶのはいいが、使い切って交換するのは結構タイヘン。トイレは新しく、使用後はチップ(カンナ屑みたいなもの)をぶちまける。消臭効果がある。 

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▲設備はまあまあ。トイレは、入り口の階段を上がった左で大小、右は小のみとのこと。小は石の上にテキトーにやればいいって若い美人の奥さんにジェスチャー付きで説明された。「女の人は?」と聞くのはやめといた。

 

 不便には違いないが、ある意味楽しくもあるドライキャビンはいかにもアラスカらしいと言える。ほんの二、三十年前はアラスカ中の家がほとんどドライキャビンだった、つまり上下水道の設備がなかったのだろう。その時代を偲んでアラスカ体験をさせると言う教育的意味合いがドライキャビンにはあるのかもしれない。また、ドライキャビンはフェアバンクス以北に多く、つまり極寒のツンドラ地帯は上下水道の配管が破壊されやすいという事情もありそうだ。もっとも、オーナーの家のトイレはどうなってるの?と言う素朴な疑問もあるにはあるのだが。