おやじは荒野をめざす【アラスカ編】

がむしゃらに突き進むおやじに、アラスカは何を与えてくれるのだろう、、、

(5) 旅のスタイル

 若い時はヒッチハイクで日本中を旅した。社会人になった最初の夏休み、息苦しさから逃げたい一心で津軽をめざした。サラリーマンだからたった5日間の自由時間しかない。「津軽海峡冬景色」じゃないけれど、会社から直接上野発の夜行列車に乗り、翌朝には五所川原駅に降り立った。お盆休みの竜飛岬は観光客が溢れていた。太宰治の斜陽館はあえて素通りし、十三湖を経てどこをどうたどったか、電車とバスを乗り継いで仙台まで戻った。「最後ぐらいヒッチハイクで決めたいな」と郊外の駅まで電車で行き、徒歩で国道に出た。久しぶりのロードサイド。しかし、車は虚しく通り過ぎ、1時間過ぎ、2時間経った。3時間を経過して、もしこのまま車が止まらなかったらどうなるんだろうと考え始めた。なんとか東京に帰り着いても、休む間も無く会社に行かなくちゃいけない。束の間の開放感どころか旅の疲れがどっと出て、、、そもそも、ちゃんとした社会人がヒッチハイクなんかやるわけないって。俺は何を勘違いしてるんだ、未練たらしいことしてんじゃねえよ、、、そこまで考えて、急いで仙台に戻り、東北新幹線で一気に帰った。

 あれから40年経ち、今やっと自由を得た。しかし、ここに至るまでの間に体力は落ちた。人生の残り時間もウン分の一になってしまった。若い時と同じスタイルの旅は無理としても、「年相応」から何歩か踏み外した旅をしたい。私は典型的な「下手の横好き」で趣味が多い。カメラ・フライフィッシング・チョウチョ・登山など。それらの道具以外にも自炊用具やテント関係、春夏秋に対応する服。これだけで大型ダンボール箱5個くらいになる。移動は車無しでは考えられない。山に行く時と同じように小型・軽量化した荷物を車に積み込み、かつ車内で寝れる体制を整えた。

 

 カナダもアメリカも兎に角広くて、こちらの人たちは車などを使って、のんびり時間をかけて旅行している。家財道具一式?みたいのからシンプルに体を張ってのチャリダーまで、それぞれが自分の体力・経済力・好みに合ったやり方で楽しんでいる。日本は狭いところに人がギュと詰まっているし、長い休みはなかなか取れない。だから、近場の温泉でバーンと豪遊というパターンになるのだろう。最近になってやっと「働き方改革」というのが唱えられているが、人生の一番充実した40年間を企業に捧げなくてはいけない日本社会。「本当の豊かさって何なのさ?」と問わざるを得ない。

 

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 ご覧の通りキャンピングカーにも色々あって見ているだけで楽しい。一台百万円くらいから一千万近いのもありそう。でも、旅行そのものはとても質素で、我々日本人とはお金をかけるところが違ってるという感じだ。

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チャリやバイク派は単独または二、三人の小グループが多かった。女の人も結構目についたのには驚いた。最後から一つ手前の写真、ドイツからやって来たおっさん三人組のキャンピングバスの後ろにくっついてるのは、な、なんと小型ヘリコプター。カヤックMTBも積んでて、「すごいね!これじゃ陸海空、行けないとこ無いね。で、ヘリはどこで手に入れたの?」。「うーん、ウォルマート(こちらのヨーカドーみたいなもの)で安く売ってたんだよ、、、ガッハッハ、、、」なんてジャーマンジョークかまされた。最後の写真がキャンピングカー専用のRVパーク。トイレ・シャワー・ランドリーなどの施設が整っている。各地にあって、地方産業の一つとして立派に機能している。

 

でも、もし私が若かったらこれがいいな。

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 しかしだ、今こうして振り返ってみると「アジアのおっさん一人旅」というのには出会わなかった。寂しいような、ちょっとだけ誇らしいような、そんな感じではあるのだが。